Foolish boyfriend~5年前の約束~
「バカなのは達哉でしょ…」
泣いて、なんて言えるわけない。
原因はあたしだって、分かってるんだから。勘が鋭い達哉なら、もうとっくに気づいてるはず。
だから、そんな泣きそうな顔…
「……寒いからさ、もう家入れよ。俺ももう帰るし」
「……まだ帰りたくない…」
帰りたくないんだよ。
まだまだ一緒にいたいんだって。
離れたくないんだって。
「わがままだなー(笑) 大丈夫、また明日も会えるだろ」
「わがままだもん…」
「……めずらしいじゃん」
達哉はそう言いながらも、あたしの背中に手を回して、抱きしめてくれた。
「達哉だって、帰りたくないくせに…」
「…うん、帰りたくない…」
いつも喧嘩ばっかしてる達哉が、今は何だか可愛く見える。
「もう一回、キスしていい?」
達哉らしいというか、何というか……
やっぱりキス魔だ。
「キス魔だね」
あたしがそう言うと、達哉は何も言わずに微笑んで、半ば強引に唇を奪う。
今日は言えないや。
クリスマスの日に、ちゃんと言うから。
だからその日まで、何も知らないふりをしててね。いつもの、バカで優しい達哉でいて。