Foolish boyfriend~5年前の約束~
君と約束
「舞子、荷造りできた?」
「うん、できたよ」
もうすぐ達哉が迎えに来る時間。
荷造りも終わって、もう明日にはすぐ引っ越せる状態。空っぽの部屋になってしまった。
空っぽ、っていうか、荷物を積めた段ボールしかない。
「明日になるまでには帰ってきなさいよ?」
「うん、分かってる」
そんな風にお母さんと話してるときに、チャイムがなった。
達哉が来たみたいだ。
「じゃあ、気を付けてね。」
「うん、行ってきます」
ドタバタと音を立てながら階段を降りていくと、お母さんに「走らないの!」と怒られた。
ごめんね、お母さん。
早く達哉に会いたいの。
――――ガチャ…
「急ぎすぎ。転けるぞー」
どうやらバタバタと、あたしが階段を走って降りていた音が聞こえていたらしい。
「転けないよ」
早く会いたかったのがバレたみたいで、何だか少し、恥ずかしかった。
「行こうぜ」
少し笑って、手を差し出す達哉。
決して太くはないし、他の男の子よりは小さいのかもしれないけど、あたしよりもゴツゴツした、男の子の手だった。
「うん」
その手に自分の手を重ねると、達哉はあたしの手をギュッと握る。
寒いけど、手袋しないで良かった。