Foolish boyfriend~5年前の約束~

「ふふっ、ありがとね、この場所を教えてくれて」


「前から連れてきたかったんだけどさ、せっかくクリスマスがあるんだし、綺麗なときに連れてきた方がいいと思って」


確かに、綺麗だもん。

せっかく楽しいのに、なんか嫌なこと思い出しちゃった…


こんなに綺麗な夜景を見てるのに、フッと頭に浮かんだ"転勤"という言葉。


達哉に話さなきゃならない。

きっともう、気づいてるんだろうけど。達哉はそんな素振り見せない。


何て言おうか迷っていたとき


「舞子も座れば?」


「え、あぁ、うん」


ベンチに座った達哉にそう言われて、あたしもその隣に腰を下ろした。


「何か、言いたいことあんだろ?」


夜景を見ながら小さな声で呟く達哉。


ほんとに小さな声で、こんなに近くにいるあたしでも、聞き取るのがやっとだった。


「うん……」


そう言って頷くと、達哉はあたしの手をそっと握った。それに答えるように、あたしも握り返す。


「あたしね…、お父さんたちについていくことにした」

少しだけ強まった、手を握る力。


「行くな」と言われてるみたいで、目の奥が熱くなった。視界がぼやけて、涙が零れそうになる。


「あー…、そっか…」

そう言った達哉の声も、震えていた。


「まぁ…、会えなくなるわけじゃねぇし…俺、会いに行くから…」


そんな震えた声で、そんな泣きそうな顔で、強がらないでよ…


「…なかなか会えないんだよ…? 会いに行くって…そんな簡単に会いに来れる距離じゃないじゃん…っ」
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