Foolish boyfriend~5年前の約束~
「達哉、1回も行かないでほしいって言ってない………それって、あたしが引っ越しても何とも思わないってこと…?」
ポタリ、と涙が零れた。
こんなこと、言うつもりじゃなかったのに。
表情を見れば……この泣き出しそうな顔を見れば、無理してるのなんて、分かったはずなのに。
「舞子…」
名前を読んだあと、達哉は立ち上がってあたしの手を引いた。
その勢いであたしまで立ち上がって、達哉に抱き締められる。
「俺、わがまま言っていいんなら、いくらでも言うよ。」
「わがまま言ってよ…全部聞きたい」
身長が大して変わらないから、達哉の声が耳元で聞こえる。背中に手を回して抱きつくと、フワッと達哉の匂いがした。
「…ほんとは行ってほしくないよ。"行くな"って言いたかった。本気で、さらってやろうかと思った」
さらってやろうかと思ったって…
達哉らしい…
「舞子が自分から俺のそばにいたいって言うなら、二度と外に出さない。誰にも会わせない。俺だけのものにする。」
ビックリした。
あたしの知らないとこで、そんなこと考えてたんだね。
「でも、舞子はそれを望んでないから。俺は一番に舞子のことを考えたいし……だからとめねぇよ。」
「すごい…考えてたんだね。いつもはバカなくせに、何か大人っぽい。」
普段の達哉からは考えられない。
いつもあたしのことを一番に考えてくれてたけど、まさかここまでだとは…