Foolish boyfriend~5年前の約束~
「俺、舞子に言い忘れてたことがあった」
昨日あれだけ、達哉の本音を聞いたのに、まだあるんだ。
あたしは、何かちょっと嬉しいけど。
「何?」
そう聞けば、達哉はあたしの右手をつかんで、薬指にはまった指輪を触った。
「これ、舞子が俺のものだって印だから」
「分かってるよ。昨日も言ってたじゃん。大丈夫だよ、絶対に外さないから」
達哉は昨日も同じことを言っていた。
ハッキリ覚えてるよ。あたし嬉しかったんだもん。
「うん。でも、言いたいことはそれじゃなくて……」
「え?」
いつもの達哉じゃないように見える。
ほんとに、真剣な表情が似合わないなぁ………って、失礼か。
「今はまだ無理だけど」
「うん」
指輪を見ていた目線を上げて、あたしの目を見つめる達哉。
「俺が大人になって、ちゃんと責任とれるようになったら…」
何を言おうとしてるのか、何となくだけど予想できちゃった。自意識過剰かもしれないけど、あたし、期待してもいいの?
「絶対……絶対迎えに行くから、そのときにまで左手の薬指、開けとけよ」
心臓がグッとなって、涙が溢れた。
あたしが泣き出してしまったせいで、達哉はかなりあたふたしてる。
嬉しいんだよ、達哉。
これからのことを、当たり前のように約束出来るのが。