Foolish boyfriend~5年前の約束~
遠距離恋愛
「暑い、暑い、あつーい!!」
空気が歪むほどの熱気が、あたしの体を取り巻く。汗が、額を流れ落ちるほどだ。
「我慢してよ、中村の家まであとちょっとなんやから」
暑い、と叫んだのは、あたしじゃない。あたしの隣にいる友達の杏(アンズ)の声。
「おかしない? 何で男の中村が家におって、あたしらがこないな暑い中歩かなあかんの?」
「勉強会しようって言ったのは、杏でしょ?」
笹原杏(ササハラアンズ)
中村大翔(ナカムラヒロト)
2人とも転校してできた友達。
「そうやけどさー。まさか中村の家しか開いてへんなんてね、そないなこと考えてなかってん」
「結局はそこしか開いてないんやから、仕方ないでしょ。それに、杏は課題をしに行くんやなくて、写しに行くんやからね?」
あたしの言葉が少しだけぎこちないのは、引っ越してきたこの大阪の言葉に、段々慣れてきたから。
まだ、完全に関西弁になったわけではないけど、ちょっとずつ、変わってきている。
それも、中村と杏のおかげだ。
何故この2人と仲良くなったのか。それは今から7ヶ月前に遡る。
転校したてのころ、あたしは見事なまでの人見知りを発揮して、誰にも話しかけれないでいた。
おまけに、言葉もあたしとは全く違う。
完全なる、アウェイ。
そんなとき話しかけてくれたのが杏と中村だった。