Foolish boyfriend~5年前の約束~
「ちゃうやろ。杏は、やっても出来ん子や。俺みたいなんを、やれば出来る子っちゅうんや」
「うっさいわ、中村の分際で生意気な。はよアイスちょうだいよ」
2人の会話を聞きながら1人でノートを広げ始めるあたしの頭の上に、コツン、と何かが当たった。
「ん、アイスいるんやろ?」
「あぁ、うん。ありがと」
「うちにもアイス!」
杏が中村の後ろでギャンギャン騒いでいる。そんなにアイスが欲しかったのか…
「お前うっさいねん。アイスしか頭にないんか?」
「暑いねん! あんたとはちゃうんや、うちらは歩いてここまで来よったんや!」
「お前それ何べん言うねん」
「何べんでも言うたるわ。うちは、歩いてここまで来たんや!」
「………あほくさ。お前課題せなあかんのとちゃうんか? 広田見習えや」
急に名前が出てきたことにビックリしたけど、終わってない課題を続けた。
確かに、中村の言っていることは正しいから。杏は一番頑張らなくちゃならないのに、アイスのことしか考えてない。
「………それに関しては何も言い返されへんわ。よし、課題見せて」
あたしの隣に座ってノートを広げ始めた杏だったけど、初めから自分でやる気なんてないんだね。
「お前アホやな。何で俺がお前に課題見せなあかんねん。自分でやれや」
「中村、ここ分からん」
あたしが分からないと言って呼ぶと、中村は素直に歩いてくる。