【短】クリアネス-未来へ-
“仰げば尊し

 わが師の恩


 教えの庭にも 
 はや いくとせ”





窮屈なくらい満員になった
卒業式の会場で

みんな泣きながらの大合唱だった。


俺は泣けない。
涙が出ない。


……こいつら
なんで泣いてんのかな。


ただ教えられた歌詞を音に乗せて発するだけ。

造花のバラをブレザーの左胸にあしらえて
並べと言われた列に並んでいるだけ。


それだけなのに。






「隼人君、これ」


帰り際、担任が俺に茶封筒を差し出した。


「……何ですか?」

「卒業文集」

「………」


いらないです。

と言うのはさすがにオッサンが可哀想な気がして


「ありがとうございます……」


ぽつりと呟き、受け取った。
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