【短】クリアネス-未来へ-
俺はマユミお姉ちゃんの部屋を出た。


子供の足で
とぼとぼ歩いて

家に着く頃には
踵は靴擦れして皮が捲れ上がっていた。


久しぶりに開く
長屋の引き戸。



誰も居ない居間に入る。

ちゃぶ台、なんていう言い方がぴったりの、質素なテーブルの上には

メモも何も添えられていない
三枚の一万円札。



そのお金をポケットに入れて
近所のコンビニに向かった。


大好きな唐揚げが入ったお弁当と

そしてもっと大好きな
オレンジジュースを買って帰った。



いつもお姉ちゃんが用意してくれていた
オレンジジュース。

自分で買うのは二回目だ。


一度目はマユミお姉ちゃんにお遣いを頼まれたとき。
俺は余ったお金で、自分のオレンジジュースも買ったんだ。



なのにそれはメチャクチャ酸っぱくて
とても飲めたもんじゃなかった。




「隼人、間違って100%ジュース買っちゃったんだね」



マユミお姉ちゃんが笑っていた。
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