[短編]One-Way Ticket
「千香…」

「ん?」

那智に名前を呼ばれて振り向いた。


那智の顔が目の前にあった

声になるまえに体が硬直…

「髪にゴミついてる。」


長い指が私の前髪に触れた

一瞬にして顔が赤くなる


そして
遅れて香る香水の臭いが私に那智の行為を実感させる

「あ、ありがとう。」


赤い顔を隠すように私は窓の方を向いた


不意打ちの攻撃…


窓に写った顔はまるでリンゴちゃんのよう


今まで…私はずっと向こうから告白してきた相手としか付き合って来なかった


片思いもしたけど


いつも自己完結で…告白なんて問題外。


だけど…


今、私の隣にいる那智が他の女の子と付き合うなんて

嫌だ


絶対に嫌


那智とこうして居たいよ


隣の席は私専用にして


なんて


言えない


ため息が窓に写った私の顔を消していく。
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