『短編』5分前
いよいよ、今年の紅白も残すところ、あと4組。
大御所の歌手が堂々と舞台に上がる。
あまり興味がないので、頬杖をつきながらぼんやりと画面を眺める。
紅白歌合戦が終わったら、突然、夜の闇と寺の鐘の音と共に「ゆく年くる年」が始まって、静かに新年を迎える。
家族がその場で正座し、
「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
と頭を下げるのが、我が家の習慣だ。
日本酒でできあがってしまった父は、今年は夢の中で新年を迎えることになりそうだけど。
あと30分足らずで、毎年恒例の挨拶の時間がやってくる。
今年もまた、静かに新年を迎えるつもりでいたのに。