『短編』5分前
突然、家のチャイムが鳴った。
「こんな時間に誰かしら」
母はスリッパの音を鳴らしながら、玄関へ急ぐ。
「あら、悠ちゃん」
玄関先で響いた母の声に、体が固まった。
なんで、悠斗兄ちゃんが来るの?
大晦日に、回覧版……は、ないよね。
居間に戻ってきた母は、
「悠ちゃんが呼んでるよ」
と、わたしに向かって言った。
「う、うん」
恥ずかしいやら照れくさいやらで、慌てて立ち上がる。
そのせいで、こたつの脚に小指をぶつけた。
「いったあぁぁ~い!」
思わず大声を出してしまった。
あ。
今の玄関まで絶対聞こえたよね?
サイアク……。