『短編』5分前
これって、悠斗兄ちゃんと初詣ってことじゃない?
はやる気持ちを抑えながら、部屋着から外出用に着替える。
お気に入りのスカートを手に取りそうになって、思わず手を引っ込めた。
そこの神社に行くだけなのに、スカートは頑張りすぎだ。
ジーパンに脚を突っ込んで、甘めのセーターを着た。
ばさりとコートを羽織り、部屋を出る。
紅白歌合戦が流れている居間を足早に通り過ぎながら、
「ちょっと、悠斗兄ちゃんとそこの神社に行ってくる」
と、早口で言い残し、悠斗兄ちゃんの待つ玄関へ急いだ。
「お待たせ」
わたしがそう言うと、悠斗兄ちゃんはにこりと笑って、
「じゃあ、行こっか」
と玄関の戸を開けた。