『短編』5分前


神社に着くと、悠斗兄ちゃんはちらりと時計を見た。


「11時55分。セーフ」


そう言って、賽銭(さいせん)箱に小銭を入れると、手を合わせて目を閉じた。


静かに目を閉じている様を見て、わたしも隣りで手を合わす。


すると、悠斗兄ちゃんは大きく深呼吸して、


「よかった、今年中にお願いできた」


と言って、にんまり笑った。


あれ?


初詣じゃなかったんだ。


「やり残したくなかったんだ」


真剣なまなざしで、わたしを見つめる。


「何をお願いしたの?」


目を合わせられないわたしに、悠斗兄ちゃんはにっこりと笑った。

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