銀杏
第一章

咲が天涯孤独になった訳



「あのね、お母さん。今日もタケルくんと一緒に遊んだの。」

保育所に迎えに来た母に、楽しかった事を早く伝えたくて駆け寄った。

「そう。よかったわね、楽しかった?何して遊んだの?」

「えっとねぇ、レンジャーごっこ。タケルくんがレッドでぇ、コウくんがブルー、アカネちゃんはグリーン、サキがピンク。それからタケルくんと二人で宝物かくした。」

「宝物?」

「うん!あ、タケルくんのおばちゃんだ。おばちゃーん。今日ね、タケルくんとね…。」

「サキ!」

尊が咲を掴まえて耳打ちをした。

「宝物の事、誰にも内緒だって言っただろ。」

「お母さんにも?」

「あったり前じゃん。言っちゃダメだからな。」

「…わかった。」


二人でコソコソしている様子を見て、母親同士顔を見合せクスクスと笑った。

「仲がいいわね、二人とも。」

「ホントね。」




< 1 / 777 >

この作品をシェア

pagetop