銀杏


授業中は尊のことを考えていて、上の空だった。

頬杖をついて目をつり上げてみたり、下唇を突き出して前髪を息で吹いてみたり、窓の外をみたり、机に伏せたり、貧乏揺すりをしたり…と全く落ち着かない。

クラブの時もテニスコートをじっと見ていた。

「咲。…咲?咲ってば!」

「うわっ…は、ははい!」

「どうしたのよ?何か今日の咲、変。」

じーっと顔を覗いてくる友美。

「そ…そう?えへへ…。」

「何よ、その作り笑い。何かあったでしょ?」

「別に何も…。」

「嘘おっしゃい!咲が嘘つく時すぐわかるんだから。帰りに聞いてあげるからちゃんと言うのよ。わかった?」

「う…。」

…友美っておばちゃんみたい。言わなくても何でもお見通しって感じだ。




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