銀杏


私は感動してただただ涙が溢れて言葉が出なかった。

先輩はピアノを片付けると咲の前に立った。

「元気づけるためだったのに…泣かしちゃったな。」

首を大きく左右に振って答えようと思うのに上手く言えない。

「ち…違っ。か…感動して…涙が…うっ…ひっ。」

「ははっ大袈裟だな。でもそこまで感動してもらえるなんて嬉しいよ。」

ポンポンと頭に触れて咲を立たせると背中に手を添えた。

「昼休みが終わる。戻ろ。」

「う…はい。えぐっ。」

「泣き止んでくれよ。俺が泣かせたみたい…あ、泣かせたんだ。」

惚けた言葉に「プッ、う…エヘへ…。」と変な泣き笑いになった。




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