銀杏


クラブの時に昼休みのお礼を言おうと先輩に声をかけた。

「ああ、お礼なんていいよ。大会で頑張って欲しくてエールを送ったつもりだったから。」

「でも本当に素敵で…。あれからずっと頭の中でピアノの音が鳴りっぱなしなんですよ。」

「ははっ。でもその話は今はシー。また帰りにでもゆっくりしよう。」

「はい。」

「じゃあ準備体操始めるよー!」



「…ねえ、咲。」

「ん?なあに?」

「随分ご機嫌だね。天宮くんと仲直りしたの?」

「尊?んー、まだ。」

「じゃあ、何でそんな機嫌いいの?それに先輩と随分親しげ…。」

「エヘヘヘ…。実はね…。」

「コラ!そこ話してないでちゃんとアップしろよ。」

「「はーい。」」

いけない、いけない。今はこの話しちゃいけないんだった。



その日を境に、咲の中には少しずつ先輩への想いが募っていく。

好きとか…嫌いとかではなく、尊敬できる人として、憧れる存在として。




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