銀杏
水泳大会
夏休みに入り、尊も咲もクラブが忙しくすれ違いの日々。
一年前、水泳大会に来てくれると約束をした尊に日時や場所を言いそびれて、気まずいまま当日を迎えた。
前日におばちゃんにだけ、明日水泳大会だと伝えたけれど場所や時間は言わなかった。
もし、伝えても来なかったらきっと落ち込む。
それなら初めから伝えない方がいい。
会場に到着して観客席から下を見下ろした。公式の大きな大会にも使われる50mのプール。
去年も来てるからわかってる筈なのに、今回は出場するというだけで初めてのように感じてしまう。
独特のツンとした匂い。
静まり返った水面。
天井の照明がその水面に反射してキラキラしてる。
こんな大きな会場で泳ぐのか。ドキドキしてきた。
すぐ横のプールは高飛び込み用みたいで、三段階に別れた飛び込み台がある。
一番高い所からは10mはありそうだ。
ボーッとしてそのプールを見つめていた。
「おーい、一文字。ミーティングするから。」
「あ、はい。」