銀杏


しばらくしてみんなの元に戻った先輩は、まだ少し足を引きずりながら帰って来た。

顔には悔しさがにじみ出ている。

何も話さず、ずっと俯いたままで、声をかけれる雰囲気ではなかった。



お昼の休憩になった。

朝よりも更に緊張してきた。食事が上手く喉を通らない。

「どうしよ、友美~。手にいっぱい汗かいてきちゃった。」

「大丈夫だって。いつも通りに泳げばいいんだから。」

でも心臓が口から飛び出そうなんだよぉ。

あー、こんな時尊がいてくれれば少しは落ち着く…何考えてるのよ、咲。

尊に何も伝えなかったのは自分でしょ。

そうだ。この大会でいい結果が出たら…ううん、この大会が終わったらちゃんと尊に謝ろう。

いつまでもこんな関係でいるのは嫌だ。

友美を疑ったことは許せないけど、たくさん心配をかけたのは私だ。

友美のことと、心配をかけることは別問題だ。




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