銀杏
200mを泳ぎきって一番最初にしたことは、会場を見渡すことだった。
ぐるっと観客席を見渡して、さっきの声の主を探す。
どこ?
どこにいるの?
「咲――っ!咲――っ!」
友美が叫んで大きく手を振ってる。
でもそれを無視して咲は違う方を見ている。
みんなの元へ戻る前に、観客席の中をバスタオルを羽織った姿で探し回った。
さっきの声は尊じゃなかったのかな…。
どこにも尊の姿はなくて、勘違いだったのかと肩を落とした。
みんなの元へ戻ると、友美は興奮した様子で声をかけた。
「咲、凄いじゃない!ターンの度に引き離してダントツだよ。きっと上位に入ってるよ!」
でも咲は回りを気にしてキョロキョロする始末。
「……。」
「咲?」
「え…。あ、ごめん。そんなに速かった?」