銀杏
もし上位三位内に入ってなかったら…。
競技をする時より緊張して、思わず目を閉じ耳を塞いだ。
体を揺さぶられてはっとした。
「何やってんだよ。早く前行けって。」
他の先輩に背中を押され、訳がわからず前へ前へと押し出された。
『一文字咲さん、いませんか?』
「は…はい!」
『メドレーの部。第二位、二年一文字咲殿。タイム…。』
スーツを着た男の人がマイクの前で喋るのをボーッとして聞いていた。
『おめでとう。』という言葉と拍手でやっと自分が二位になったことを理解した。
本当に?本当に二位に入った?
信じられないといった気持ちが強くてまだピンとこない。
先輩を見ると大きく拍手をして笑みを浮かべている。
自然に頬が綻んだ。