銀杏
廊下でうずくまるように倒れていた咲を抱き起こして、背中を擦る。
尊の優しさにぼろぼろと涙が零れ落ちた。
尊のシャツにしがみついて胸にコツンと頭を当てた。
「ごめ…な…さい。ごめん…なさい。うあー…あ、あー!」
尊の胸でいっぱい泣いた。張りつめていた糸がプツンと切れたように、涙はちっとも止まらなかった。
しばらくすると尊は咲を抱き締めたまま、「話がある。」と言った。
「何?」
泣き腫らした目で尊を見上げる。
「部屋…来いよ。」
ゆっくりと立ち上がって抱えるように咲を部屋に入れた。
サイドテーブルの前に座って、コンビニの袋から缶ジュースを二本取り出した。