銀杏


「ん?何?」

「泳いでいる時、クラブのみんなとは違う方向から声が聞こえた。」

「え?まさか。水の中じゃなかなか聞こえないだろ。」

「ちゃんと聞こえたもん。…本当は場所や時間を伝えたかった。でも喧嘩してたから、伝えても来てくれなかったら悲しいと思って。それならいっそのこと言わない方がいいかもって…言えなかった。」

「約束…したろ?応援に行くって。」

「覚えてくれてたんだ。」

「ふ…まあな。飲めよ。」

「うん。ありがと。」

くいっとプルタブを引いた。

プシュ――ッ

ジュースが勢いよく噴き出した。




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