銀杏
「咲が遅くに帰って来て、俺には絶対謝らないって言ったろ。」
「ああ…あれ。でもあの時は私だってムカついてたんだよ。目の前で先輩とさっさと帰っちゃってさ。」
「え?お前先に帰るって言ったんじゃないのか?」
「言ってないよ。誰が言ったの?そんなこと。」
「……。」
「……。」
そのまま考え込むように押し黙ってしまった。
「尊?」
「あ、わり。そうだ。お前友美ちゃんに一緒に住んでること言ってなかったのか?」
「え、うん。」
急に話題を変えた。何か…隠してる。
「年賀状の住所見て訪ねて来てさ、咲の家だと思ってたら俺が出たからびっくりしてたぞ。」
「友美、何か言ってた?」
「…いや別に。」
「へ?そう。友美なら何で黙ってたのって怒ってそうなのに。」
「……。」
「ふふっ。今度クラブで会ったらお礼言っとく。いっぱい心配かけちゃった。」
「そうだな。」
その日の夜は賑やかな食卓となった。おじちゃんも早く帰って来れて、咲の二位入賞を褒めてくれる。尊とも仲直りできて最高だった。