銀杏


――が、甘かった。

そこは広大な土地にコートがいくつもあるところだった。

おまけにコートは3ヵ所に別れて点在しているため、尊はどこで試合なのか全く見当もつかない。

「えー!!何よこれえ。これじゃあ、わかんないじゃん。尊のバカ。何でもっとちゃんと教えてくれないのよ!」

ブツブツ文句を言いながら、とりあえず近くのコートから覗いてみることにした。

ここじゃない。

ここも違う。

ここ?いや違う…。

ここじゃないのかなあ…。違うブロックなのかな。

その時、やたら人だかりの多いコートが目に入った。

何だろ?

見ようにも人の頭ばかりで何も見えない。

耳をすますとボールをスパーン、スパーンと打つ音がする。

前の方で誰かの話し声がして、耳を傾けた。




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