銀杏
「足速え。あれに追いつくなんて。」
「さっきからスゲーな。いつまで続くんだ、このラリー。」
「誰と誰の試合?」
「確か去年三位だった奴とこっちは…誰だっけ?去年も出てた奴だけど。」
もしかして…尊!?
う…見たい。
ジャンプして上から見ようとしても、屈んで足の間から見ようとしても、人だかりは増えていく一方で何にも見えない。
辺りを見回すとコートの奥、フェンスの向こうに数本の木が植えられている。
コートをぐるっと回って木の下に来た。
フェンスの回りはどこも人でいっぱいだけど、この木の上からなら…。
ジーパンを履いて来て正解。
サンダルを脱ぐと木に手をかけた。
「ごめんなさい。ちょっとだけ登らせて。」
足を木にかけるとチクチクした。
昔、尊と一緒に木登りして下りられなくなったんだよね。