銀杏
スパーン、スパーンとラリーが続いてる。
どっちが勝ってるんだろう。
一番下の太い幹に手をかけると…見えた。
あ、やっぱり尊だ。
コートの中を走ってボールを打つ姿は一目で魅了した。
真剣な顔。
光る汗。
筋肉質な体。
これが尊?
意地悪で、
あまのじゃくで、
偉そうに言う尊?
まるで別人。
あんな一所懸命で真剣な姿を見たのは初めてだ。
スパーン…
スパーン…
続くラリーにハラハラする。右に左にと揺さぶられて、疲れが出てきてるみたい。
でもそれは相手も同じでサーブにミスが出た。
サーブ権が尊に移る。
チャンスだよ。
「行け――!!」