銀杏


「本当にそれだけ?他に何も言ってなかった?」

喧嘩の仲裁にわざわざ家を探してまで来る?

「…う…ん。」

歯切れの悪い返事。
こういう時、尊は嘘を吐いてるか、隠してることがあるかどっちかだ。

「ねえ。私が尊と一緒に暮らしてる理由、どこまで言ったの?」

「事情があって…としか言ってない。」

「ふーん。」

じーっと下から探るような目付きで尊を見た。

尊は手元のコップに手を伸ばし、背もたれに背中を付けてズーッと空っぽになったジュースを訳もなく吸った。

「友美のこと、何か隠してるでしょ。」

「…え…。」

驚いたように私を見る。

「やっばり。白状しなさいよ。」

「…そう言うお前は俺に隠してないのかよ。テニスの試合の日、おかしかったぞ。」




< 177 / 777 >

この作品をシェア

pagetop