銀杏


「私が試合中に木の上から『行けーっ』て言ったのが聞こえてて、気が散るから帰れ…て。
尊の回りをウロチョロしてたら邪魔だ、痛い目に合いたくなかったら尊に二度と近づくな、て言われたの。
それに、もしこの話を誰かにしたら私が辛い思いするって。
その時、ラケットで押された拍子に横の花壇に躓(つまず)いて挫いたの。
しばらく動けなくて、ついでに日射病になったけど。」

「先輩が…そんなこと言ったんだ…。」

「うん。」

尊は言葉をなくしたようだった。

「……。」

「友美がね、」

「あ…うん。」

「あの先輩には気をつけた方がいいって、以前忠告してくれてたの。気に入らない人には意地悪するって…。初めは半信半疑だった。でもあの試合の日、決定的になったよ。」

「そ…か。」




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