銀杏
「……。」
「きっと先輩は苦しんでる。
誰だってそのままの自分を愛して欲しい。
でも自分をさらけ出せないでいるんだもん。
だから友だちになるの。
後半年もすれば受験だし、うまくいかないかもしれない。
だけどこのままよりはずっといい。」
咲はいつからこんな風に考えるようになったんだ。
俺がちょっと悪戯しただけでビービー泣いてたのに。
一見、自分の身を守っているのかと思いきや、俺や友美ちゃんより、いや回りの大人たちよりも先輩のことを考えてる。
俺たちよりずっと大人なのかもしれない。
「咲は…優しいな。」
「え…や、やあだ、尊ったら。そんな真面目な顔してぇ。」
バシバシと俺の肩を叩く咲の顔は真っ赤だ。
「き…着替えてくる。」
逃げるように部屋から出て行った。