銀杏


そのうち文化祭も終わるとさすがにクラブに顔を出すことはなくなった。

先輩との接点を掴むことができないまま日々が過ぎていく。

でも、この時すでに咲は気がついていた。
無視されようが『バカじゃないの?』と言われようが、先輩の表情に変化が起きているのを。

俺も友美ちゃんも半ば呆れながら咲のすることを見守っていた。

でもある日、咲は嬉しそうにこう言った。

「先輩がね、挨拶すると目を逸らすんだけど、何かこう…笑ってるの。
『フン!』てするんだけど、照れ臭そうなんだよ。」

確かに言われてみれば二学期になってからの先輩の態度は、以前はツンとしたところがあったけど、今は柔らかくなってるし、顔の表情も優しい。

友美ちゃんに対しても少しずつキツい言葉がなくなってきてるらしい。

でも彼女に言わせると、
「あんなのわかんないよ。芝居かもしれない。まだまだじっくり観察させてもらうわ。」
まだ素直に信用するには至らなかった。




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