銀杏
そして迎えた卒業式。
式を終えて花道を歩いて来た先輩に、「おめでとうございます。」と声をかけると、「話があるの。後で中庭に来て。」と言われた。
咲は笑顔で、「はい!」と答えるけれど、俺は少々ドキッとした。
友美ちゃんがなかなか先輩のことを信用しなかったのと同じで、俺も全面的に信用した訳ではなかった。友美ちゃん程ではなかったが。
だから咲と一緒に先輩のところへついて行くことにした。
卒業生が全員花道を抜けると、俺たちは中庭へ急いだ。
そこには花壇の縁に座って空を見上げる先輩がいた。
その横顔はホッとしたような、清々しいような、スッキリとした顔をしている。
咲は笑顔で、「先ぱーい!」と駆け寄った。