銀杏
尊は腕をほどくと、
「母ちゃん、このおてんば何とかしてくれよ。」
と嘆く。
「尊のせいじゃんか!余計なことするから…。」
まだ尊の上に馬乗りになったまま抗議して、ついでにここぞとばかり同じ様に両頬を潰してやった。
カシャッ
音のした方を見ると、おばちゃんがカメラを持ってこっちを見てる。
「ほら、見てごらんよ。面白いのが撮れた。」
フンフン…と鼻歌を歌いながら台所に立って昼ごはんの用意を始めた。
尊とはいつもこんな感じで毎日が過ぎていく。
時々尊は何か言いたそうな表情をするけれど、それは何だかわからない。訊いても言わないし。
夏休みの水泳大会で、咲は去年と同じメドレーに出て優勝した。
尊も優勝して、おじちゃんもおばちゃんも自分のことのように喜んでくれた。