銀杏
その後はもう受験ということが目の前にちらつくも、まだ気持ちはついてこなかった。
体育祭や文化祭が終わる頃にやっと思い腰が上がり、少しずつ勉強に力を入れていった。
クリスマスやお正月をのんびり過ごすという気分にはなれず、落ち着かない、イライラとした日々。
尊はどこを受けるのだろう。何も聞いてなかったな。
私立の受験の前日、どこを受けるのか訊いた。
「清田(せいでん)高校。」
「…清田…?テニスで全国大会とかに出てる高校だっけ?」
「うん。」
「私立専願なの?」
「いや。本命は公立。北高校。」
へぇ。でもそこもこの辺りの公立の中では、テニス部が一番強いって聞いたことがある。
「高校行ってもテニスするんだ。」
「うん。咲は?」
「私は明日は西山(せいざん)高校で、公立は…緑ヶ丘高校。」
「そ…か。じゃあ、高校は別々だな。」
「…そだね。」
保育所時代から考えても別々なんて初めてだ。
何か…寂しい。
「……。」
「……。」
「明日、頑張ろうな。」
明るく言う尊に笑みを返した。