銀杏
入学式は二人とも重なったため、おばちゃんは困っていた。
すると尊は「俺はいいよ。母ちゃん、咲の方行ってやれよ。」と言ってくれたお陰で、おばちゃんはホッとしたように咲の入学式について行く。
でも尊は小さな声で「母ちゃんと一緒になんて恥ずかしくって行けるかよ。」とブツブツ言っていた。
咲の通う高校は正門の脇や中庭、体育館の前、校舎の周り等、桜の木がたくさん植えられていて、ちょうど今まさに満開だ。
ほとんどの人が桜の木の前で足を止め、その美しさに酔いしれる。
おばちゃんも例外ではなく「うわー、綺麗ねえ。学校でお花見ができそう。」なんて言ってた。
正門を入ってすぐ手続きをしたところで、小さなチラシを配る人がズラリと並んでいる。
そのチラシはクラブの勧誘で、全てのチラシを受け取り体育館の方へ向かうと、大きな模造紙に“来たれ!〇〇部”と書かれた看板がいくつも立て掛けられていた。