銀杏
「君、一文字さん?」
見ると尊より少し背の低い、くせ毛の男子が立っていた。
福田くんと名乗るその人は去年、咲が優勝した水泳大会でバタフライで二位だったらしい。表彰された時の咲の顔が嬉しそうで、印象に残ってたんだとか。
「水泳部入るの?」
「まだ決めてないの。福田くんは?」
「もちろん入るよ。君も入れば?折角優勝までしたのにもったいない。」
「うーん、クラブ見学してから考えようかと思って。」
その時先生が教室に入ってきて、一斉に体育館へ向かった。
校長先生やPTA会長の長い祝辞と、何とか会の代表さんの挨拶と続く。
あー、ダルい。尊も今頃長ったらしい話を聞いてるんだろうな。尊のことだ、大欠伸でもしてるんじゃないかな。
想像すると笑えてきた。クスクス…