銀杏
ある日、ランニングから戻った尊と、風呂上がりの咲が二階へ上がろうとするのとかち合った。
「お帰り。お風呂お先に。」
「おう。…あのさ、後で話あるんだけど。」
「うん。じゃあ尊の寝る前でいいから部屋に来て。」
尊と話をするなんて久しぶりだ。
何となくウキウキとする咲がいた。
尊は咲の部屋に来たけれど、特に何も話さない。
しびれを切らした咲が口を開いた。
「話をするなんて久しぶりだね。同じ家に住んでるのに顔も合わさないなんて。クラブ大変?」
「まあな。でも好きでやってるんだからそんなこと言えない。」
「……。」
「……。」
「話って…何?」
「…うん。」
また押し黙ってしまった。
「もう、元気ないなあ。尊らしくないよ?」
「俺らしくない?…かもな。今の俺、おかしいよな。」