銀杏


こうしてると落ち着く。

尊の腕の中が温かい。

尊の胸に頭を預けると、腰に回された手はそっと後頭部を撫でた。

「ちゃんと髪乾かせよ?」

咲の両肩を掴んで引き離すと「おやすみ。」と言葉を残して部屋を出て行った。




まだドキドキしてる心臓。

お風呂上がりの石鹸の匂い。

逞しい腕に大きな手。

後ろから抱きついた時に重ねられた手のひらは、マメができてるのだろう。
ガサガサしてた。

こんなに好きなのに…伝えられない。

伝えていいのかどうか…それさえもわからない。

さっきのハグはどういう意味?

家族だから?

それとも…



尊と同じ時間を過ごせないことが寂しいのに、

いざ同じ時を過ごそうとすれば息苦しい。

どうやって息をしてたのかさえ、

わからなくなってしまう。

私は…どうすればいいのだろう。


大きく深呼吸をして天井を見上げた。




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