銀杏
席を立ち、リビングを出ようとして扉のところで振り向いた。
「…また、話聞いてね。」
おばちゃんの優しい笑顔を確認すると、尊の部屋をノックした。
「尊、入ってもいい?」
「……。」
「尊?」
「…ダメ。」
「じゃあ、そのままでいいから聞いて。
今日は、その…ごめんね。尊のこと嫌いなんじゃないから。」
「……。」
返事のない尊。怒ってるのかと気になったけど、扉から一歩下がって部屋に戻ろうとした時、
カチャ…
扉が開いて尊が顔を見せた。
「あ…あの。」
「いいよ、気にしてないから。」
ニコリともせず、ぶっきらぼうにそれだけ言うとパタンと閉めた。
やっぱり思った事はちゃんと伝えないといけないな。
改めてそう感じた。