銀杏
しばらく考えて思いついたけど、こんなこと言ったら怒るかな…。
「…あの…。」
「何?」
笑みを浮かべながら優しく訊く尊に心臓がドキンと跳ね上がる。
今まで普通に話してたのに、急に激しく動き出す鼓動。
尊の優しい眼差しに恥ずかしくなって目を逸らせた。
「えっと…その……ハグ。……ハグして欲しい。」
一瞬、驚いたように目を見開いた後、真剣な表情になって立ち上がり、部屋の扉に向かって歩く。
怒った…?
「こっち来て。」
言われるがまま側に行くと、パチンと部屋の電気を消した。
「え…何で消すの?」
「鍵…付いてないだろ。母ちゃんが突然来ても見えないように。」
「たぶん来ないよ?」
「そうだけど絶対来ないとは限らない。」