銀杏
二人羽織りと星の夜
夏休み間近の7月初め。休みに入ってすぐ行われる林間学校の準備のために、日曜日におばちゃんと尊と三人で出掛けた。
尊は自分の物を買うのに、「何でもいい。」としか言わず、おばちゃんは、「精のない子だね、全く。好みとかないのかしらね。」と呆れ顔。
「これは?試着してみたら?」
「…面倒くさい。」
一体尊は何だったらいいんだろう。
おばちゃんは、「はあ。」と短い溜め息を吐いた。
「どうせ勝手に買うと文句だけは言うんだから。」こそこそと私に耳打ちしてきた。
ちらりと尊に視線をやってクスッと笑うと眉間に皺を寄せて、「何だよ。」と不機嫌な顔つきがもっと不機嫌になる。
「ふふーん。なんでもないよ。」
「女ってすぐそうやって内緒話すんだから。はっきり言えっつーの。」