銀杏


「お疲れ様でしたーっ!」

声と共に尊たちは自転車で駆け抜ける。尊は咲にタオルを頭から被せて「顔隠しとけ。」と頭に手を置いた。

何で?と不思議に思う咲を乗せて自転車は正門を抜ける。
緑ヶ丘テニス部が、女の子たちに文句を言われながらもガードしてくれたお陰で、うまく通ることができた。

「もう大丈夫だろ。タオル取ってもいいぞ。」

「ぷはっ、暑い~。何でこんなことするのよ?」

「緑ヶ丘の女子に目つけられたい?」

「あっ。」

そっか。私を後ろに乗せて走り抜けたんだもん。噂が広がるに決まってる。

「それにしても凄かった。あれ、みんな尊目当てだったのかな?」

「さあ…?」

惚けた返事をしてるけど、少なくとも緑ヶ丘のテニス部を待ってた訳じゃない。こういう時、尊は決まって知らんぷりをする。

きっとさっきの耳打ちも、ガードするからその間に…とか何とか言ってたんじゃないかな。




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