銀杏
「あ――っ!!」
「うお!何だよ、いきなり。驚かすな。」
「ケータイ!!」
「ケータイ?忘れたの?」
「着信音!!何よあれ!?いつ入れたのよ。」
「あれ、今頃気づいた?もう随分前だぜ。確か買ってすぐ。」
すぐ…?
「え…あれ?もしかしてアドレス入れるからって部屋に持って行った時?」
「正解。」
「何であんなの入れるの!?恥ずかしいじゃない!!」
尊の服を掴んでぐいぐい引っ張った。
「ぐえ!!うわわわ…。」
バランスを崩した自転車はガッシャーン!!とひっくり返った。
「おめー、何すんだよ!」
「知らない!尊が悪いんだから。」
プイッと顔を背けて膨れた。
いつもの尊なら「そーかよ!」て言って、自分だけ自転車に乗ってさっさと帰ると思っていた。
でも今日は…
自転車を起こすと「ほら。」と言って手を差しのべてくれる。
意外な行動にボーッとしてると「立たねえの?」と訊いてくる。
「あ…ありがと。」
小さな声で返事した。