銀杏
ケータイを取り出し、アドレス帳から尊の番号を押す。
プルルル…プルルル…
『はい。』
電話に出た尊に「今どこにいるの?もう着いたんだけど。」と伝えた。
『あ?もう着いたんだ。正門の近くにいるけど、咲はもう中に入ったのか?』
「うん。中庭。」
そう言って正門を振り返った咲と、中庭を振り返った尊。
バッチリ目が合った。
たった今すれ違った最低男…。
尊だった。
「ねえ、天宮くん。誰からの電話?」
「どうしたの?早く行こう。」
「何見てんの?」
女の子たちの甘ったるい声。
尊の腕を引っ張ったり、背中を押したり、上目使いで尊を見る仕草。
何もかも……気持ち悪い。