銀杏


ケータイを取り出し、アドレス帳から尊の番号を押す。

プルルル…プルルル…

『はい。』

電話に出た尊に「今どこにいるの?もう着いたんだけど。」と伝えた。

『あ?もう着いたんだ。正門の近くにいるけど、咲はもう中に入ったのか?』

「うん。中庭。」

そう言って正門を振り返った咲と、中庭を振り返った尊。

バッチリ目が合った。

たった今すれ違った最低男…。



尊だった。



「ねえ、天宮くん。誰からの電話?」

「どうしたの?早く行こう。」

「何見てんの?」

女の子たちの甘ったるい声。
尊の腕を引っ張ったり、背中を押したり、上目使いで尊を見る仕草。



何もかも……気持ち悪い。




< 266 / 777 >

この作品をシェア

pagetop