銀杏
耳に当てていた手はだらんと下がり、だんだん眉間に皺が寄る。
カーッと頭に血が上り、たぶん顔は真っ赤になっているに違いない。
ぎゅっとケータイを握り締め、まだ通話が繋がったままなのを確認すると
「帰る!!」
一言そう叫んで一方的に切った。
バタバタと走って正門に向かう。
人の流れに逆らって走り抜けるには、次々とやって来る人が邪魔になる。
後ろの方では尊が叫んだような気もしたけど、人とぶつかりそうになりながら、それも無視して走り続けた。
どのくらい走ったのか、息が切れて立ち止まった。
駅前のバスターミナルのベンチに座って息を整える。
荒い息遣いに、通りすがりの人がチラチラと様子を伺いながら通って行く。