銀杏
うわあ…。可愛い。
生まれたばかりの小さな仔犬が母親のお腹に集まってきゅうきゅう言ってる。
まだ犬らしい声を出すこともできない。
目を閉じたまま母親のおっぱいに吸い付く様は、何とも言い様がない程可愛い。
ふぐ…きゅう…ぐちゅ…ぐちゅ…んーぐう…きゅう…
母犬はとっても大事そうに優しく仔犬たちを順番に舐める。
「犬種は何ですか?」
「雑種。」
「ふーん、可愛い。え…と、ハナちゃん…だっけ?よく頑張ったね。五匹も生まれたんだ。おめでとう。触っても…大丈夫?」
「うん。」
ハナちゃんを撫でると尻尾を振った。
犬の傍から離れず、じっと見続ける咲に声をかける。
「一匹あげようか?」
「…ううん。嬉しいけど遠慮しときます。今はみんな忙しくて、きっと面倒見きれないと思うから。」