銀杏
「そっか。残念だな。犬がいれば癒しになると思うんだけど。」
「あの…でもこれから時々見に来てもいいですか?」
「ああ、もちろん。じゃあ、アドレス交換しとこうか。来る時はいつでもメールして。」
アドレスを交換した後、テラスに置いてある木製の椅子に座って、じっと咲を見つめる北条さんの視線に気づいた。
何でそんなにじっと見るの?
目線が合わせられなくなって俯いた。
「今日は出かける予定だったんじゃないの?ここにいて大丈夫?」
あ…。
そうだ。尊のことで怒ってたんだった。
落ち着いたらだんだん気になってきて…。
さっき消してしまった3件のメール。何が書いてあったんだろう。
今更行ってももう招待券はないし、入れない。
だけど尊の話をちゃんと聞かなきゃ。
もう喧嘩はこりごり。
考えてみれば「女の子に興味ない」と言ってる尊が、愛想を振りまくのが変だ。