銀杏


「そっか。残念だな。犬がいれば癒しになると思うんだけど。」

「あの…でもこれから時々見に来てもいいですか?」

「ああ、もちろん。じゃあ、アドレス交換しとこうか。来る時はいつでもメールして。」

アドレスを交換した後、テラスに置いてある木製の椅子に座って、じっと咲を見つめる北条さんの視線に気づいた。

何でそんなにじっと見るの?

目線が合わせられなくなって俯いた。

「今日は出かける予定だったんじゃないの?ここにいて大丈夫?」

あ…。
そうだ。尊のことで怒ってたんだった。
落ち着いたらだんだん気になってきて…。
さっき消してしまった3件のメール。何が書いてあったんだろう。

今更行ってももう招待券はないし、入れない。
だけど尊の話をちゃんと聞かなきゃ。
もう喧嘩はこりごり。

考えてみれば「女の子に興味ない」と言ってる尊が、愛想を振りまくのが変だ。




< 273 / 777 >

この作品をシェア

pagetop