銀杏


尊は受付で、家族だからと伝えると咲の手首を掴んで、無言でぐいぐい引っ張って行く。咲の歩調などお構い無しだ。

人気のないグラウンドの片隅に連れて行くと、急に立ち止まり振り向いた。

「何で無視した?」

「あ、ごめん。つい…。」

「ああ?つい…て何だよ。こっちの気持ちも知らないで。いきなり帰ったら心配すんだろが。どうせお前のことだから、勝手に誤解したんだろ?」

「誤解?私が何を誤解したって言うの?」

「女の子連れて歩いてた俺見て、女たらしとか思ったんじゃねえの?」

…図星だ。

でも素直にそうだと認めるのも悔しくて――

「ち…違うもん!お…女の子に興味ないとか言って、私のいないとこでは連れ歩いて喜んでんじゃん。」

「……。」

あれ…もしかして墓穴掘った…?




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