銀杏


今までと違う。
尊が…優しい。
ううん、違うんじゃなくて…。
今までだって優しいところはあった。
ただそれをうまく表現できなかっただけ。

急に大人になったみたい。
こっちが照れ臭い。
肩を並べて歩調を合わせてくれる。
時折見せる柔らかな笑顔。
頭をくしゃっとしたり、口いっぱいに頬張ったほっぺをツンツンつついたり。

そっと髪に触れる指先。
歩くと微妙に当たる手の甲。
お互いの指先が絡むような絡まないような。

胸の奥がきゅっと鳴った。



「そろそろ時間だな。俺は後夜祭があるから遅くなる。気をつけて帰れよ。」

「うん、わかった。ありがと。尊も気をつけてね。」

正門まで送ってもらい、そこで別れた。




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